洒落物研究 | 紺ブレジャケット

SOUTIENCOL 三浦が『洒落物研究』と題し、『後世に残したい語るべきこと』を徹底的に語り尽くす不定期連載。デザイナーとして30年にわたり一線で活躍してきた経験の”一方的なアウトプット”や様々な感性と結びつき”コンフリクトを生み出す”プロジェクトである。

第5回目はアイビースタイルの定番アイテムである、『紺ブレジャケット』。発祥はイギリスだが、その後アメリカへわたりアイビースタイルにおける定番アイテムとなった。今回はそんな定番の紺ブレジャケットについて語っていく。

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profile ”Toshihiko Miura”
Instagram:@soutiencol.white

大阪生まれ。現在75歳で現役続行中のデザイナー。音楽一家の末っ子として生まれ、バイオリンやエレキギターを弾く洒落者の家族から多大な影響を受けて育つ。

10代の頃は新宿や心斎橋のジャズ喫茶、ディスコで遊び、みゆき族をやるなど、まさしく”勉強嫌いの遊び人”。20代でVAN 石津謙介に出会い”生き方”を学ぶ。ファッションのイロハ、TPO、プロダクトに対する徹底的なこだわりの精神。現在のSOUTIENCOLに通じる”職人気質”を学んだ。

1992年 SOUTIENCOLを創業。”普遍的なプロダクト”と”遊び心”を加えたトラディショナルブランドとして全国のセレクトショップから支持を受ける。

デザインリソースは58年前のジャケット

今回作成する紺ブレのデザインリソースは、58年前のVANのジャケットだ。このジャケットはまさしくアイビーのスタイルを表現しているものだ。紺ブレの原型となったポイントとしていくつかあげられる。

point

  • 3ツ釦段返り
    この言葉は聞いたことがある人が多いのではないだろうか。アイビーのジャケットを象徴するディティールであることは間違いない。ただ間違った使われ方をしていることが多い気がしている。

    そもそも三つボタン段返りである意味を考えてみよう。3ツ釦の上2ツ釦掛けスタイルもできれば、昨今は中1ツ釦掛けスタイルが多い。60年代は段返りではなく、上2ツ釦掛けの3ツ釦ブレザーもあった。そこで重要になるのが衿ラペルの返り方で、段返りの位置だ。返り方はプレスで押さえずふわっと返す。上2ツ釦掛けスタイルにするには、段返りと呼ばれるラペルの返り位置を第一釦と第二釦の間隔の上1/3の位置にする。これが本当の3ツ釦段返りで、型紙の設計もこの返り位置に設定している。第一釦ホールの糸目が返った方が表穴目になるか、裏穴目になるか、プロでも意見の分かれるところ。
  • フックベンツ
    フックベンツとは『カギ型』のことで「イギリスの古典的な礼服」なども同じディティールが多い。VANのジャケットも、私が持っている古いイギリスとのフロックコートもフックベンツだ。アイビースタイルの特徴的なデザインになる。
  • 袖の2つボタン
    袖のボタンは2つボタンと決まっている。袖が2つボタンなのは、フロントが3つボタン段返りだからだ。紺ブレの場合、片袖+フロント= 5つというアイビ ーリーグの不文律があるのだ。

アーカイブを原型にし、スティアンコルの紺ブレジャケットは作られている。

通年使える素材

素材はドレッシーすぎないウールリネンを使用。通常はトロピカルなどが多いが、麻が入っているので夏でも使える。また表面感が出てるため奥行きが感じられる。ウールが入っているのでシワにもなりにく、シーンレスで着用できるのもポイントだ。

着心地の追求

紺ブレに限らないが、アイビーやトラッドのポイントとして「ナチュラルショルダー」は重要なファクターだ。肩パッド、それに肩先に入れるゆき綿は、極力薄くて機能を果たせるものが使われている。
服は肩で決まると言われる程、肩の型は重要。SOUTIENCOLでは首元から肩先にかけての肩下がり角度を型紙で4.5cくらいにしてナチュラルショルダー感を出している。ジャケットのインナーで着ることの多いシャツなども、この肩下がり角度に一致して着心地を追求している。肩下がり角度の合わない服同士を重ね着すると、着心地を損ね違和感を感じる。

「ナチュラルショルダー」は、肩先を丸く仕上げるのが王道。これは袖付け縫製の時、袖側の縫代と見頃側の縫代を一方向へ倒すのではなく、両方向に割って縫い合わせてある。

これに加え、仕上げ工程でアイロンをかけ丸く仕上げていく。

この縫製仕様とアイロン仕上げにより、ナチュラルショルダーが完成していく。

ディティール

ボタンはデットストックの金ボタンを使用。背抜き仕立てなので軽さがでて春夏に重宝する。内ポケットの玉縁はクラシックなレジメンタルストライプを使い、「三角チー」付きの本格的な仕様。

ユーティリティウェア

STYLE . sophisticate-look

アイビーを象徴する紺ブレだが、スタイリングの幅がとても広い。ビジネスからタウン、リゾートまで活用できてしまうのだ。この汎用性の高さが、愛される秘訣でもある。

STYLE . seaside-look

STYLE . at ease-look

3月下旬 発売

いかがだっただろうか。紺ブレジャケットはオンライン・卸先ブランドで3月下旬頃発売を予定している。ぜひご覧いただきたい。

about. SOUTIENCOL

トラッドカルチャーをベースに普遍的なプロダクトを追求するブランド。古い英国やアメリカのベーシックなアイテムにインスパイアされ、独自の時代感からくるセンスで、本格的なディティールや遊び心をくすぐるこだわったデザインを特徴とする。

instagram @soutiencol_official

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