洒落物研究 |BAND COLLAR

SOUTIENCOL 三浦が『洒落物研究』と題し、『後世に残したい語るべきこと』を徹底的に語り尽くす不定期連載。デザイナーとして30年にわたり一線で活躍してきた経験の”一方的なアウトプット”や様々な感性と結びつき”コンフリクトを生み出す”プロジェクトである。

第7回目は創業当時から作り続けているヴィンテージテースト満載のバンドカラーシャツ。伝統的なスタイルを大切にしながら、現代の生活にフィットする工夫がちりばめられている。そのディティールを紹介したい。

過去の記事一覧はこちら

profile ”Toshihiko Miura”
Instagram:@soutiencol.white

大阪生まれ。現在75歳で現役続行中のデザイナー。音楽一家の末っ子として生まれ、バイオリンやエレキギターを弾く洒落者の家族から多大な影響を受けて育つ。

10代の頃は新宿や心斎橋のジャズ喫茶、ディスコで遊び、みゆき族をやるなど、まさしく”勉強嫌いの遊び人”。20代でVAN 石津謙介に出会い”生き方”を学ぶ。ファッションのイロハ、TPO、プロダクトに対する徹底的なこだわりの精神。現在のSOUTIENCOLに通じる”職人気質”を学んだ。

1992年 SOUTIENCOLを創業。”普遍的なプロダクト”と”遊び心”を加えたトラディショナルブランドとして全国のセレクトショップから支持を受ける。

“Band Collar” とは何か?

「バンド」とは、台衿のことである。首回りにあたる部分で、通常のシャツは台衿に外衿が縫い付けられている。衿を縫い付けず、着脱可能な付け衿をセットしたシャツがバンドカラーシャツの始まりだ。衿付きシャツの場合、台衿の高さを背中の中央部分で測ると、3cm~3.5cmほどが一般的。対して、古典的なバンドカラーの台衿は、2.5cm程度と低めだ。糊で固められた付け衿を付けるとドレスシャツ、衿を外すとカジュアルシャツと二通りで着ることができた。

BAND COLLARの由来

取り外し式の衿の誕生は1820年のある日。鍛冶屋の夫の為に毎日綺麗なシャツを用意する苦労を減らす為に、ニューヨーク州在住のモンタギュー夫人は、あっさりシャツの衿を切り取ってそれを洗濯したとなっている。

Esquire’s ENCYCLOPEDIE OF 20TH CENTURY MEN’S FASHIONSより

40年以上前にロンドンのヴィンテージショップで買ったシャツ。現在のSOUTIENCOL BAND COLLARを作るうえでのデザインソースとなっている。
本物のBAND COLLARシャツで、1920年代の英国のドレスシャツだ。
衿を付け、タイドアップ・スタイルとしてフォーマルな場で着用された。衿を取り外すと作業服として、またパジャマとしても着ることができた。

1992年、SOUTIENCOL創業時にデザインしたBAND COLLAR SHIRT。だいぶペザントシャツ(昔、農夫が着用していたシャツ)のテイストが混じっている。
生地はキャラメルドビー、ボタンはナット釦。


ここからは、SOUTIENCOLでデザインされたバンドカラーのこだわりについて語っていこう。

歴史的背景を踏まえた衿

正統なバンドカラーシャツでは、台衿の正面側、通常は第一ボタンが付く場所に、ボタンではなくボタンホールが開いている。(①)
ギボシ(②)という先の丸まった留め金具をこの穴に通し、衿を台衿に取り付ける構造になっている(③④)。ギボシとは、バッグのベルト留め具などとしても使われる金具だ。

台衿の背中側にも同様にボタン穴があり、付け衿が固定ができる様になっている。
穴の周り4cmは生地が二重になっている。ヒヨク仕立てと呼ばれる形で、下に隙間が空いている。ここから指を入れると、ギボシの取り外しがしやすい。

付け衿は、糊で固めたしっかりとした衿が使われていた。
現代では付け衿を利用する機会はまず無いが、SOUTIENCOLでは今でもこの特徴的な台衿の形を残している。

着心地の追求

ジャケットの下に着ても違和感のないように、肩下がりはナチュラルショルダーにそろえている。これはBAND COLLARシャツに限らず、ボタンダウンでも同じだ。首元から肩先にかけての肩下がりを、型紙で4.5cmぐらいにしている。試した中で、一番日本人の肩の形にしっくりくるバランスだ。

縫い方も工夫している。袖付けと袖下(脇の下から袖先のカフスまで)、脇縫い(脇の下から裾まで)は、「本縫いの巻き縫い」という技法を使っている。縫い目を巻いて覆うような縫い方で、縫い目が肌に直接触れないため、肌触りにストレスがなくなる。

胸の部分は2重になっており、裏地はフラシの仕立てになっている。
フラシ仕立てとは
裏地の縫い付け時に、縫っていない遊びの辺を残すこと。SOUTIENCOLのバンドカラーシャツは、胸の下あたりのステッチで裏地を固定しているが、両脇にあたる部分は縫い付けていない。そのため、ステッチが大きく表に出ない。
なぜフラシ仕立てなのか
表地と裏地は生地が異なるため、洗濯時の縮率にどうしても違いが出る。そのため、ステッチの箇所がシワになったり、着用時に突っ張る原因になってしまうことがある。ステッチのない辺があることで余裕が生まれ、何回も着こんでも着心地が悪くならなくなる。

裏地はソフトで肌触りが良いものを厳選した。細い糸で編まれた60番手糸の綿ローンを使用。ふんわりと柔らかな風合いで、表から透け感も気にならなくなっている。

特徴的な袖口とガゼット

袖のカフスボタンの上に、3.5cm巾で同じ生地を縫い込んである。
これは、私の遊び心と昔人へのオマージュで考えたデザインだ。
以前、購入した古い英国のシャツがこんなデザインになっていたことから発想した。長すぎる袖を詰める際、通常は不要な部分をカットする所、切らずに折り返して縫い付けてあった。布が貴重な時代に、生地を無駄にしないために考えられたデザインと勝手に解釈して取り込んだ。


裾には、ガゼットと言う小さな布地で補強されている部分がある。
縫製技術の未熟な時代は、身頃の両脇の縫い目が裾からほつれてしまうことが多かった。それを防ぐための補強として、ガゼットが設けられていた。現代の縫製ではほつれる心配はほとんどなくなったが、今でもデザインとして残っている。

いかがだっただろうか。
伝統的なバンドカラーシャツのニュアンスを細かく組み込みながら、現代風に解釈したデザインに落とし込んでいる。
是非その着心地を楽しんでもらいたい。

Coming soon!

超レアな生地の端、がデザインされたBAND COLLAR。
ドビー織りで100% BELGIAN ORGANIC LINENの文字が入っている。

8月発売予定。晩夏に、あえてリネン。それもベルギーの厳選されたオーガニック農園で栽培された、高品質な麻。

乞うご期待。

公式アカウント @soutiencol_official

上にスクロール