洒落物研究 | Toshihiko Miura

SOUTIENCOL 三浦が『洒落物研究』と題し、『後世に残したい語るべきこと』を徹底的に語り尽くす不定期連載。デザイナーとして30年にわたり⼀線で活躍してきた経験の”⼀⽅的なアウトプット”や様々な感性と結びつき”コンフリクトを⽣み出す”プロジェクトである。

第⼀回⽬はこちら

第⼆回⽬は三浦の歴史を振り返りながら、2つの価値観が交差するセッション⽅式をとる。
前半では三浦が⾃⾝の想いを語る。メディア嫌いもあり今ままで多くを語ってこなかったため、改めて語っていく。後半では盟友フリーポートの藤島さんに、三浦の⽣み出すプロダクトや、セレクトショップという⽴場から想うことを語っていただく。

profile ”Toshihiko Miura”
Instagram:@soutiencol.white

⼤阪⽣まれ。現在74歳で現役続⾏中のデザイナー。⾳楽⼀家の末っ⼦として⽣まれ、バイオリンやエレキギターを弾く洒落者の家族から多⼤な影響を受けて育つ。
10代の頃は新宿や⼼斎橋のジャズ喫茶、ディスコで遊び、みゆき族をやるなど、まさしく”勉強嫌いの遊び⼈”。20代でVAN ⽯津謙介に出会い”⽣き⽅”を学ぶ。ファッションのイロハ、TPO、プロダクトに対する徹底的なこだわりの精神。現在のSOUTIENCOLに通じる”職⼈気質”を学んだ。
1992年 SOUTIENCOLを創業。”普遍的なプロダクト”と”遊び⼼”を加えたトラディショナルブランドとして全国のセレクトショップから⽀持を受ける。

profile “Free port”
Instagram:@freeportueno

東京・深川出身の野球好きな下町野郎。学生時代はスポーツ用品を買いに上野によく通っていた。

大学卒業後、特別養護老人ホームにて介護職として5年間働き、その中で服装が人に与える影響に興味をもった。

馴染みのある上野で買い物をするようになり、当時のFreeport店長”長沼”さんの接客スタイル、お店作りに感銘を受け、弟子入りのような形でFreeportの一員となる。

2015年 4月 から2022年1月まで長沼さんの下で学び、現在に店長となり店を運営している。

⽇本のレベルを引き上げたい

三浦

数⼗年ファッションデザイナーをしてきて思うことは、インターナショナルで勝負できるレベルになってほしいということだ。これは今も昔も変わらないことで、常に外の世界と向き合い勝負していかないといけないと。
ブルックスの真似やバブアーの真似だけをしていてはダメだ。初めは真似でも良いが、その先に⽇本らしさ、⾃分らしさを表現ができないと。スリッポンコートの時にも語ったが、『物作りの背景』『⽇本⼈に合うデザイン』『ディティール意図』、、、。なぜそれを作るかを考えていってほしい。

藤島

バブアーはまた最近流⾏ってきていますね。トラッドの流れが回帰しているのでしょう。ファッションは良くも悪くも『トレンド』があります。⼤きな流れを掴もうとして、物作りが本質からずれていくこともありますよね。
三浦さんがおっしゃる、『⽇本のレベルを引き上げる』とは、『⽂脈や歴史を尊重しなさい』ということなのでしょうか。

三浦

それも1つある。特に藤島さんのような、『デザイナーの伝道者』にはそうあって欲しい。デザイナーの意図や意志を理解し、お客様にわかりやすく伝えてほしいと願っている。
⼀⽅で注意したいのが、歴史や権威を重視しすぎることだ。私は⽂脈や歴史は尊重するが、それに依存してほしくはない。全⾝ブルックス、全⾝バブアーがカッコイイとは思わない。もちろんそういった時もあっていい。私⾃⾝も、着ているものがカッコよければ良いという時期はあった。
お客様は依存するのは仕⽅ないと思う。ただデザイナーである私や伝道者であるセレクトショップのオーナー、ファッション関係者はそうではいけない。作り⼿や伝い⼿が『依存』すればファッションは崩壊する。

藤島

セレクトショップが『デザイナーの伝道者』というのとても共感しています。私もデザイナーさんの意向を汲み取って伝えることを重視しています。展⽰会でデザイナーさんのモノづくりを学び、それを接客で伝える。最近ではブログやインスタグラムを活⽤して伝えることも増えてきました。
Freeport ブログ(Freeportの日常)

歴史や権威への依存、、、。やってしまいがちなことですね。”10万円のコートを着て、コンビニのコーヒーを飲んでたらイケてない”とか⾔い出したらダメってことですね。歴史や権威を重視しすぎると、こういった思考に陥ってしまいます。特にメンズファッションではありがちなので注意が必要だと感じます。

伝道者には同じレベルになってほしい

三浦

さっきも伝えたが、セレクトショップのオーナーさんには、デザイナーの伝道者であってほしい。つまりこれは、『デザイナーと同じレベル』であってほしい、ということだ。加えて、『お客様にわかりやすく伝えてほしい』。
『デザイナーと同じレベル』とはつまり、『学ぶ』『考える』だ。藤島さんはスティアンコルの展⽰会では⾮常に熱⼼に学んでくれるし、それを発信もしてくれている。

藤島

まさに教授と⽣徒の関係ですね笑。スティアンコルの全てを理解できているとは⾔えませんが、なるべく多くのことを学び、それをお客様に伝えていきたいと思っています。
三浦さんがおっしゃる『考える』とはどういうことでしょうか。

三浦

『考える』とは、事象から思考を発展させることだ。私はイギリスにいた頃、テーブルマナーについてこんなことがあった。⾷事を終えた後のナイフとフォークの置き⽅が思っていたのと違ったのだ。フォークのハラを上に向け、時計の4時の位置に置くことがマナーだと思っていた。イギリスでは、フォークのハラを上に向け、ナイフとともに時計の6時の位置に置いていたのだ。
私はこの事象に対して、思考し観察した。すると中央に置くことで、店の⼈が左右どちらからでもお⽫を下げやすいのだということがわかってきた。つまりこれは店の⼈への『配慮』なのだと。それ以来私もこのマナーを守っている。

藤島

なるほど、、、。つまり『考える』とは相⼿の意図を汲み取るということですね。

三浦

そうだ。端的に⾔えば『コミュニケーション』ということだろう。時間は限られており私が全てを伝えることができない。特に現代⼈は忙しい。
私は『伝える』、みんなは『考える』。これがお互いの仕事だ。

藤島

お客様にはわかりやすく伝えたい

三浦

お客様にわかりやすく伝えることは、セレクトショップオーナーにぜひお願いしたいことだ。私もインスタグラムをやったり、ブログを書いて伝えようとしているがなかなか難しい。どうしても専⾨的になってしまう。
先⽇、雑誌2ndの対談に出た時、ライターをしてくれた元ビームスの⻘野さんの⾔葉が⾮常にしっくりきた。私が語った型紙やパターンの専⾨的な話を、『着やすい構造ということですね』とワンセンテンスでまとめてくれたのだ。型紙やパターンなんて⾔われるよりよっぽど理解しやすいだろう。このようなお客様が理解しやすい伝え⽅が⾮常に重要だと感じる。
『2nd(セカンド)』2022年12月号 Vol.189「紺ブレ時代、再び」特集号

藤島

お客様に伝えることは、プロとして⾮常にこだわっています。ブログも毎⽇投稿するように⼼がけています。
作り⼿の三浦さんが『お客様にわかりやすく伝えること』をフォーカスするのは少し意外でした。最近インスタグラムで実施している、アーカイブコレクションもその⼀貫でしょうか。

三浦

その通りだ。これは⾃社オンラインをやって初めてわかってきたことなんだ。『私が勧めたから』『カッコいいから』という理由でスティアンコルの商品を買ってくれる⽅が少なからずいてくれる。初めはあまり良いことと思っていなかった。なぜなら私の思いを理解して買ってくれていると思えなかったからだ。
しかしお客様から『着⽤してみたら肩周りのフィット感がすごい良くて、厚⼿のニットを着てもゆとりがありそうです』といった的確なコメントをいただくようになった。つまり着⽤してみて理解度が深まったお客様が出てきたのだ。
お客様は情報に飢えている。⽴場によってやり⽅は違うが、私たちはお客様に対して、『聞き上⼿』にならないといけないのだと感じる。それが引いては、⽇本のレベルを上げることにつながるのではないか。⾃社オンラインをやる意味も、インスタグラムのアーカイブコレクションも同じ理由だ。

藤島

とても共感します。特にスティアンコルのリネンシャツは、『着た後によくわかった』というお客様が多いです。夏に実施する『リメイクポロ祭り』はフリーポートの名物になっています。
フリーポートでは、『お客様同⼠がコミュニティ』になっています。特に若いお客様が、年上のお客様から『教えてもらう』という光景をよく⾒ます。これも1つの伝わりやすさなのだと感じています。

これからのこと

いかがだっただろうか。今回はToshihiko Miuraという⼈物を通してスティアンコルというブランドについて理解を深めていった。なぜブランドをやっているかを理解いただけたのではないだろうか。今後も不定期で連載していくので、ぜひご期待いただきたい。
こんなことを語ってほしいなどあれば、ブランド公式Instagramへメッセージをお願いしたい。参考にしながらコンテンツを作っていきたい。

公式アカウント @soutiencol_official

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